任天堂が10%賃上げするとの報道があるも日本の労働法制事情も海外のギークに共有される
米国を中心に,テック企業の技術者が大量に解雇されており,技術者が受難の季節を向かえています.そんな中,日系企業の代表格である任天堂が,業績見通しを引き下げても一律10%の賃上げするとの報道がありました.解雇の波が押し寄せているさなかの海外にいるギークさんたちには魅力的に映るのかな,と思ったのですが,反応は意外にも冷静なようです.
任天堂が賃金について10%のベースアップを表明したことが,話題になっています.同社は,今期の業績見通しを引き下げたのですが,それにもかかわらず賃上げする予定を示しました.このことは,国内の同業者には,それなりのインパクトになるのではないかと思われます.
また,もともと,国内における任天堂の賃金水準は,高い方だと言えます.doda の調査によると,平均年収は989万円程度だったそうです.この水準に加えてベアがあるとのことなので,今回の発言は,少なからず他社の賃金水準にも影響を与えそうです.
もっとも,今回の賃上げの直接の原因は,任天堂の独自の戦略にもとづく経営判断として行なわれたものではなさそうです.
というのも,賃上げは,先立って岸田総理大臣が各界に求めていたもので,すでにその旨の調整が行なわれていたからです.その目的は,急激に進行したインフレに対応することに加え,出生率の低下や移民の減少にともなう労働力の低下に対応することにあります.任天堂の社長である岩田聡さんは,「長期的な成長のために,労働力を確保することは重要なこと」表明されたそうですが,このような理由は後付けのように思われます.大会社が中心となって,政府の意向に沿った賃金水準を設定したのでしょう.
さて,この点について,大量解雇に苦しんでいる海外のギークはどのように見ているのでしょうか.Hacker News の会話を覗いてみることにしましょう.
欧米の賃金水準からすると,日本のソフトウェアエンジニアがそれほどもらっていないことはたしかなところで,10%賃上げがあったところで,たかが知れているという所感は,冷静な見立てだと思われます.
この点について,他の発言では,任天堂の約1000万円という給与水準を基準にして「高い」「安い」と議論されているようです.しかし,そもそもこの任天堂の給与水準は,日本の一般的な給与水準ではないですよね.日本のソフト業界において,約1000万円という年収水準は,かなり高い部類に入ります.この点については,視点が抜けているかな,と思います.
また,日本の労働法制について解説されている方もいらっしゃいます.
やや不正確なところがあるものの,この方は,日本の労働法制をだいぶよくご存知の方だと思われます.日本には,正社員への待遇や賃金体系がある一方で,表向きにアピールできない非正規雇用者に対する労働条件や賃金体系があります.
Hacker News に関する限り,任天堂の賃上げについて肯定的にとらえている発言はあまりないようでした.海外の方からすると,製品価格が上昇する懸念に加えて,賃上げについても,日本の非正規労働法制をつつくヤブヘビになってしまっているようです.