Windows の実行モジュールを Linux などで動かせる Wine 8.1 が昨週に続き早くもリリースされました
昨週,メジャーバージョンを 8.0 に上げてリリースされたばかりの Wine ですが,早くも最新版の 8.1 がリリースされました.
Wine は,ゲームをはじめとした Windows の実行モジュールを Linux や macOS,*BSD といった POSIX 環境で動作させることができるプログラムです.
今回のアップデートは,昨年12月初旬から凍結(freeze)されていたパッチを取り込んだものです.
通常の開発スキームとして,Wine は,隔週で新規バージョンをリリースする開発方針を取っています.ところが,ここ数ヶ月は 7.x系から8.x系へと,大きなメジャーバージョンアップがあったため,Git ソースツリーでは,パッチの受け入れを凍結していました.
昨週,無事に8.0へのメジャーバージョンアップが終わったため,今回のリリースから通常運転に戻り,隔週リリースのサイクルに戻ることになっています.もっとも,12月から溜まっていた更新を取り込んでいるため,今回の 8.1 は比較的大きな更新となっています.
今回の更新内容は,主にバグ修正ですが,新機能もいくつか取り込まれています.
まず,Windows バージョンのプレフィクス(prefix)が,新たに “Windows 10” に更新されています.従来は “Windows 7” がデフォルト値でした.このおかげで Windows モジュールを,デフォルトで Windows 10 として動作させることができるようになりました.
また,今回の更新から,VK_EXT_hdr_metadata 拡張機能が有効になっています.この機能は,Steam を運用する Valve 社 が,自社の製品である Proton の一部として開発したもので,今回,Wine プロジェクトの一部としてバックポートされました.Proton は,Wine をベースに作られたプログラムで,Windows ゲームを Linux 上で動かすための実行レイヤです.
元のプロジェクトに機能拡張分をきちんとバックポートしてくれる企業はなかなかない中,Valve 社は貴重な企業だと言えるでしょう.
VK_EXT_hdr_metadata 拡張機能は,Vulkan の仮想フレームバッファ(swap chain)の一部で,原色と白色,輝度レンジに関する HDR (High Dynamic Range)メタデータを取り扱うドライバです.これは,Doom Eternal など,Vulkan 周りの機能を必要とするゲームタイトルから求められていた機能でした.Linux で HDR なゲームを楽しもうとされている方には朗報と言えそうです.
HDR サポートについては,OS や X の環境も関わってきますが,着々と進展している模様ですね.