Oracle Java SE の商用ライセンス変更でシステムの運用コストが大幅に増加する可能性

Oracle Java SE の商用ライセンス変更でシステムの運用コストが大幅に増加する可能性

エンタープライズ系の基幹システムやウェブサービスのバックエンドなどで広く使われているJava言語ですが,商用ライセンスの変更により,一部ユーザの負担するライセンスコストが,大幅に増加する可能性が指摘されています.専門家によると,Java の使用にかかるライセンスコストは,これまでの2倍から3倍,大きい場合は,10倍ほどにもなると考えられるとのことです。

Java は,もともと Sun Microsystems が開発していたプログラミング言語でしたが,2009年に Oracle が Sun を買収したため,Java の開発とそれに伴う所有権も Oracle に移行しています。Sun の時代は,比較的分かりやすかったライセンスですが,Oracle が管理するようになってから,ライセンスに関するポリシーが二転三転しています.また,Oracle の商用有償ライセンス化にともない,オープンソース版の JDK や Oracle 以外のベンダが参入したこともあり,全体像が非常に複雑で分かりにくいものになっています。

Oracle は,2018年に Java SE の商用サブスクリプションライセンスを設定しました.このときは,デスクトップ環境の使用で,ユーザあたり月額2.5ドル,サーバにおける使用で,プロセッサあたり月額25ドルの設定でした.これまで,エンタープライズ向けの JDK 標準は Oracle JDK だったために,この有償化の決定は,現場を大きく混乱させました.

その後,Oracle JDK に対抗する形で,AWS が OpenJDK を元にした Amazon Corretto を無償でリリースし,Microsoft も OpenJDK を自社のクラウド環境で無償利用できるようにしました.それが原因であるかは定かではありませんが,このような動きの後,Oracle も2021年から Oracle JDK 17 を無償提供するよう転換しています.

今回,Oracle は Oracle JDK の商用ライセンスを再度変更することにしました.具体的には,これまでユーザ単位やプロセッサ単位での課金していたライセンスを,2023年1月23日から,企業の従業員ごとに課金するよう変更しています.新しいサブスクリプションライセンスである Java SE Universal Subscription によると,価格は以下のように改定されます

価格(ドル) 従業員数(人)
15.00 1 - 999
12.00 1,000 - 2,999
10.50 3,000 - 9,999
8.25 10,000 - 19,999
6.75 20,000 - 29,999
5.70 30,000 - 39,999
5.25 40,000 - 49,999

冒頭参照記事における House of Bricks 社の CEO,Nathan Biggs さんによると,250人の従業員規模で,20台のデスクトップユーザと8基のプロセッサを搭載した Java のシステムを保有している企業の場合,このサブスクリプション契約に移行すると,年間3,000ドルだった費用が年間45,000ドルにまで跳ね上がると試算しています.

Oracle によると,今のところ,新しいサブスクリプション契約に強制的に移されるわけではなく,これまでの契約のまま契約を更新することができるとしています.もっとも,冒頭の参照記事は,最初はそうかもしれないが,徐々に新契約に移行するよう圧力が高まっていく恐れがあると警戒しています.

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